老後資金2000万円問題と年金対策について

老後資金2000万円問題と年金対策
回答いただく専門家は、ファイナンシャルプランナーの福嶋 淳裕氏です。

老後資金2000万円問題と年金対策についてのお悩み相談に専門家が回答

30代 会社員 男性からの質問

「現在、会社員をしています。厚生年金だけで安心だとこれまで思っておりましたが、最近の老後資金2000万円問題などがあり、将来に対する不安が強くなりました。調べると老後資金形成としてiDeCoやNISAなどの活用もあることを知ったのですが、あまり詳しくないので、プロの視点から年金対策のアドバイスをいただければ幸いです。」

ご質問ありがとうございます。
企業年金基金での実務経験も踏まえ、回答します(2019年8月20日時点)。

「老後資金2000万円問題」とは

2019年6月、「高齢社会における資産形成・管理」と題した金融庁の「報告書」が大きな話題となりました。

この報告書は、「老後を見据えた計画的な資産づくりや自助努力の重要性」を訴える、当たり前の内容です。国会で一部の議員が問題にしたのは次の文言です。

(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦無職世帯の) 収入と支出の差である不足額約5万円が毎月発生する場合には、20年で約1,300万円、30年で約2,000万円の取り崩しが必要になる

https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603.html

おそらく、直前に書かれている

金融資産の保有状況は各人により様々であることから、平均的な姿をもって一概に述べることは難しい面がある

https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603.html

という断り書きを読んでいなかったか、意図的に無視したのでしょう。

また、「毎月5万円取り崩し」の根拠は総務省が毎年公表している統計であり、今回の報告書が批判される筋合いはありません。

同じ統計で「世帯主が65~69歳の二人以上世帯の金融資産額は2,252万円」となっていることから、「2,000万円ある世帯は、毎月5万円取り崩せる」と読み取ればよいのではないでしょうか。

厚生年金保険制度を正しく理解しよう

会社員は、「老齢厚生年金」と「老齢基礎年金」という2種類の公的年金(国の年金)を受け取れます(以下、この二つを併せて老齢年金ということにします)。

老齢年金は、60歳から70歳の間の好きなときに受け取り開始を請求し(原則は65歳)、亡くなるまで受け取れる年金です(亡くなるまで受け取れる年金のことを終身年金といいます)。

「いくらくらい受け取れるのか?」は、その人の生涯賃金に「ある程度」比例します。「ある程度」というのは、毎月の給与(額面)で60万5千円を超えた部分などは、支払う保険料に反映されない代わりに、将来受け取る老齢年金の額にも反映されない仕組みだからです。

賞与も併せると年収1,000万円前後(額面)で保険料の上限に引っ掛かりますので、年収数千万円の会社員も年収1,000万円の会社員も、(その年の保険料分だけで見れば)将来受け取る老齢年金は同額です。

現在、男性の受給者が受け取っている老齢年金の額(額面)は、「年額180万円~240万円」の層がもっとも多いようです。20~40代のうちは、将来の給与・賞与を見通すことは難しいでしょうから、とりあえずは「年額180~200万円くらい」と見ておけばよいのではないでしょうか。

仮に、夫婦ともに約40年間いわゆる正社員または公務員として働き、おおむね同額の生涯賃金だったとすると、「夫婦で年額360~400万円くらい」のイメージです。

なお、50歳になると、毎年届く「ねんきん定期便」にかなり正確な受け取り予想額が記載されるようになります。また、受け取り開始の請求を、66歳以降、遅らせるほど(70歳が上限)老齢年金の額を増やせますので、50代から検討し始めることをおすすめします。

ところで、「国の年金は大丈夫?」と思われるかもしれません。一部の週刊誌や金融機関・不動産業者などは、「国の年金は将来2~3割減る」「いや、破綻する」などと不安を煽り、さかんに商売しています。

実際には、日本の公的年金制度は15年ほど前からさまざまな改善が重ねられており(他の国にはない「マクロ経済スライド」など)、少子高齢化が進んでも、日本の経済成長率がゼロを割り込むことがあっても、破綻することはまず考えられません。

将来2~3割減るかもしれないのは「所得代替率」という数値です(=老齢年金の額÷現役世代の手取り)。

一方、将来の老齢年金の実質的な額(将来の物価上昇分を割り引いて現在の価値に直した額)は、日本経済の状況によって変動するものの、「おそらくは増える、もしくは横ばい、最悪のケースでも微減」と分析されています(2014年6月、厚生労働省が公表)。

「国の年金は大丈夫」と考えてよいのではないでしょうか。

勤務先の退職年金制度の有無(概要)を調べよう

勤務先に、
・厚生年金基金・・・「厚生年金保険」とは別モノです。
・確定給付企業年金(DB)
・確定拠出年金(企業型DC)
・リスク分担型企業年金
などの退職年金(企業年金)制度があるかどうか、ある場合、ご自身が加入しているか、将来いくらくらい、どのように受け取れそうか、概要を調べてください。

なぜ調べることをおすすめするかというと、会社(または○○基金)によっては、終身年金で受け取れることがあるからです。国の老齢年金以外に、会社(または○○基金)の終身年金もあれば、老後の安心度が高まります。

あくまでも例ですが、夫婦ともに約40年間いわゆる正社員として働き、おおむね同額の生涯賃金であり、夫婦それぞれが会社(または○○基金)から年額100万円の終身年金を受け取れるとすると、
・国の老齢年金:夫婦で360~400万円くらい
・会社(または○○基金)の終身年金:夫婦で200万円
となり、夫婦ご存命の間、毎年560~600万円の収入(額面)を確保できることになります。

一般の人におすすめする「老後資金形成」の考え方

さてここからは、老後資金形成(投資、資産運用)の考え方についてです。私が普段、個別面談形式でレクチャーする際は5時間前後かけますが、今回は、PDCAでいうところのP(Plan)段階の要点を紹介します。

(1) 運用する金額

初期投資 手持ちの資金に余裕がある場合、その全部または一部を使って、運用資産の基盤を作ります。
積立投資 毎月の収入から貯蓄と支出を差し引いた額を使って、運用資産を継続的に育てていきます。
追加投資賞与・臨時収入、貯蓄・節約などによって生じた新たな余裕資金の全部または一部を使って、運用資産を補強・補正します。

まず、「初期投資」と「積立投資」に回す額を検討してください。手持ちの資金に余裕がなければ、「積立投資」から始めます。

(2) 許容できるリスク(値動きの上下のブレ幅)

どの程度の損失(評価損、含み損)まで耐えられると思うか、自問自答してください。もし、「元本割れは許せない。耐えられない」としたら、投資には向いていません(「リスク許容度が低い」といいます)。この場合は、(1)の額すべてを貯蓄に充てましょう。

「1年間で、何割くらい、または、いくらくらいの損失まで耐えられるか?」によって、次の(3)と(4)の方向性が見えてきます。リスク許容度が高い人ほど、株式など、リスク(値動きの上下のブレ幅)が大きい資産に投資することができます。

(3) アセットクラス(資産区分)とベンチマーク(値動きの指標)

どういう資産(アセットクラス)に投資するか、その資産の値動きの指標(ベンチマーク)を何にするか、検討してください。下の表は一例です(ほかにもさまざまなアセットクラスとベンチマークがあります)。

区分1 区分2 値動きの指標
株式 国内株式 TOPIX
株式 先進国株式 MSCIコクサイ
株式 新興国株式 MSCIエマージング マーケット
債券 国内債券 NOMURA-BPI総合
債券 先進国債券 FTSE世界国債 除く日本
債券 新興国債券 JPモルガンGBI-EMグローバル ダイバーシファイド

資金を複数の対象に分けて投資すること(分散投資)により、個々の投資対象のリスクが相殺され、運用資産全体のリスクを下げる効果を得られます(分散効果)。

アセットクラスの選択については、ある程度の勉強、または専門家のアドバイスをおすすめしますが、次の(4)で一例を紹介します。

(4) アセットアロケーション(アセットクラスの配分比率)

アセットクラスの配分比率(アセットアロケーション)によって、運用成績の大半が決まります。

これについてもある程度の勉強、または専門家のアドバイスをおすすめしますが、一例としてGPIF(日本の公的年金の資産を運用している、世界最大級の機関投資家)の配分比率を紹介します(2014年10月、GPIFが公表)。

国内債券 35%
国内株式 25%
外国債券 15%
外国株式 25%

(5) 金融商品とアセットロケーション(資産の置き場所)

(1)から(4)までのステップで、
・運用する金額
・どういう資産(アセットクラス)に投資するか、値動きの指標(ベンチマーク)を何にするか
・それらの配分比率(アセットアロケーション)
が決まったとします。このあと、「具体的に何を、どこで(どの制度のもとで、どの金融機関で)買うか?」を検討していきます。

① 金融商品の検討
「インデックス型の投資信託」をおすすめします(パッシブ型ともいいます)。

インターネットで、[投資信託を探す]などのワードで投資信託情報サイトを検索し、自分が選んだベンチマークごとに、
・NISA口座、または、つみたてNISA口座で購入できるもの
・インデックス型のもの
・購入時手数料がゼロのもの(ノーロード)
・分配実績がないもの
を絞り込み、これらの中でもっとも信託報酬が低いものを探してください。

② アセットロケーション(資産の置き場所)の検討

企業型DC 勤務先が契約している金融機関 投資信託の品揃えは限定的ですが、加入できる人は最優先で加入します。
個人型DC (iDeCo[イデコ]) 大手ネット証券がおすすめ 企業型DCに加入できない場合に加入します。
つみたてNISA口座 または NISA口座 同上 どちらが自分に向いているか、検討します(このあと、違いを紹介します)。
特定口座 同上 つみたてNISA口座 または NISA口座を開設する前に(または同時に)開設する必要があります。

資産をどこに置くか(どの制度のもとで買うか)によって税制や購入限度額などが異なり、運用成績に影響します。効率よく運用するため、各制度の違いを理解することが重要です。

  特定口座 NISA口座 つみたて
NISA口座
企業型DC 個人型DC
(iDeCo)
資金を出す人 自分 自分 自分 会社 (原則) 自分 (原則)
1年あたりの購入限度額 無制限 120万円 (2023年で終了予定) 40万円 (2037年で終了予定) ゼロ~66万円 (人によって異なる) ゼロ~27.6万円 (会社員の場合。人によって異なる)
購入・拠出時の税制優遇 なし なし なし 無関係 (原則) ○ (原則)
運用益に対する税制優遇 なし
払出・受給時の税制優遇 なし なし なし

それぞれの制度に向いている人は、一般的に次のとおりです。

企業型DC 加入できる人
個人型DC(iDeCo) 企業型DCに加入できない人
NISA口座 「初期投資」資金がある人
つみたてNISA口座 「初期投資」資金がない人
特定口座 「iDeCo+NISA(または つみたてNISA)」の上限を超えて初期投資・積立投資する資金がある人

③ 金融商品とアセットロケーションの決定
最後に、「何を、どこで買うのが最適か?」を検討してください。
「企業型DCへの加入可否」「初期投資や積立投資に回す額」「配偶者の有無(就労状況)」「金融機関のポイントプログラムへの関心度」などによってさまざまな正解があります。

一般的なおすすめは次のとおりです。
・勤務先の企業型DCに、①で探した投資信託がある場合はそれを選びますが、ない場合は、もっとも条件が近い投資信託を一つ選びます。
・企業型DC以外は、①で探した投資信託を取り扱っている大手ネット証券の中から選びます。なお、「NISA または つみたてNISA」と「iDeCo」で、証券会社が異なってもかまいません。

制度(口座)ごとの部分最適ではなく、(配偶者と合算した)全体最適を目指してください。以上となりますが早い(若い)ほど、高い効果を期待できます。

Q.最後にユーザーに向けて自己PRがあればお願いします。

私は、ご縁のある方を対象に個人で活動しているFPです。
現役世代向けの
・100歳までの生活設計
・「分散・節税・低コスト」投資による老後資金形成
・減額方向の保険の見直し
を得意としています。

投資・年金・税金など、「知らずに損している人」がいかに多いか、日々実感しています(振り返れば、かつての自分もそうでした)。100%経済合理的に生きていくことは無理ですし、おすすめするものでもありません。

とはいえ、明らかに無駄な支出は減らし、明らかにお得な制度は利用したほうがよいのではないでしょうか。 「人生100年時代」が視野に入るなか、寿命を迎えるまで老後資金を枯渇させないための個別相談を承ります。

面談をご希望の場合は千葉県の一部地域と東京都の一部地域に限らせていただきます。Eメール、またはEメールとLINE通話などでの遠隔地対応も可能です。

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「守秘義務を厳守します。返金保証があります(面談ありの場合)。サイトをご確認のうえ、是非お気軽にお問い合わせください。」
職種 証券アナリスト(CMA®)
ファイナンシャル プランナー(CFP®、1級FP)
1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)
名前 福嶋 淳裕
サイト https://www.fp-fukushima.com/